本記事ではアガベの温度や気候変化による影響に関しての論文を例に、温度変化によってアガベにどのような影響が起こるのかについてお話しいたします。
この論文の中で行われているとある実験が温度管理についてのヒントになっていますので、実験内容とその結果をご紹介させていただきます。
最後にこの結果を踏まえて私なりの考えを少しお話しさせていただきます。
尚、この記事の内容は動画でもご紹介しております。
論文について
論文のタイトルはこちらになります。
【Physiological and biochemical responses of Agave to temperature and climate of their native environment】
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0367253021000360
訳すとアガベの自生環境の温度と気候に対する生理学的・生化学的な反応といったところでしょうか。
この研究の目的としては、A. mapisagaとA. salmianaの苗で代謝特性を明らかにし、温度ストレスに対する植物の抵抗性を明らかにするということです。そして、産地間や種間の違いを理解するのに役立つものになっています。
この論文の中で行われている実験を簡単に説明すると、昼と夜を12時間ずつで区切り、それぞれ温度を変えた場合、アガベにどのように変化が起こるのか?を調べたものになっています。
実験内容を掘り下げてお話しいたします。
実験は、3つの温度パターンで行われています。
- 日中25度/夜間25度で管理
- 日中25度/夜間15度で管理
- 昼間25度/夜間15度に加えて、午前11時から午後3時までの4時間を45度で管理
温度が25度と15度と一定なので、他の温度ではどうなのかということはあると思いますが、この結果によるアガベへの影響が分かれば日中と夜間の温度管理をどうすべきかの参考になると思います。
実験結果
結果をまとめると以下のような感じになります。
ちなみにこれは前述したようにまたmapisagaとsalmianaにとっての結果になり他の種でどうなるかは分かりませんことご了承ください。
またアガベの産地ごとでも結果が異なる場合があるので、あくまで参考程度にお聞きください。
では話を戻して結果をお伝えすると、
日中25度、夜間15度で管理したアガベは、日中25度、夜間も25度で管理したアガベよりも平均 31%多くバイオマスを蓄積し、日中25度、夜間15度また午前11時から午後3時までの4時間を45度で管理したアガベは、他の管理下のアガベと比較して中間のバイオマスを蓄積したとのことです。
また30日間の昼夜の温度が同程度であることがストレス条件であることを示し、日中高温(45℃)が30日間4時間続く条件下でも、(部分的に)同様のストレスが観察されたそうです。
この結果をわかりやすくお伝えすると、まずここでいうバイオマスというのは植物にとって有機物量を指しているのだと思います。
植物は光エネルギーそして大気中の二酸化炭素また水を利用して光合成を行い,有機物を合成していますので、有機物が多いというのは活発に光合成を行なっている、つまり成長していると言えるのだと思います。
植物の成長の仕組み
ここで一度植物の成長の仕組みを考えてみましょう。
- 植物が光エネルギーを利用して無機物である水と二酸化炭素からデンプンなどの有機物をつくる。
- つくられた有機物は( 師管 )を通って植物のからだ全体に運ばれる。
- 運ばれてきた有機物は,( デンプン )などの形に変えられ、各部に運ばれ呼吸や成長に使われたり、果実・種子・茎・地下茎・ 根などに貯蔵される。
つまり、日中と夜間帯で寒暖差があった方がよりアガベの生育は良くなり、逆に夜間帯も高温だと光合成効率が低下し、最終的には植物の成長に悪影響を及ぼしてしまうとなります。
また日本の夏のように日中グッと温度が上がるような環境もアガベにとってはやはりストレスになっているようです。
再度この結果をまとめると…
アガベが1番成長した温度管理は、
- 成長率No.1 日中25度/夜間15度
- 成長率No.2 昼間25度/夜間15度に加えて、午前11時から午後3時までの4時間を45度
- 成長率No.3 日中25度/夜間25度
となりました。
この結果をみると、やはり日中と夜間で温度差を付けるというのがアガベの成長には大事だということが分かります。
たとえば冬期に室内管理に移行した場合、夜間帯温度が下がってしまうから…といって無理に加温する必要はなく、夜間帯から朝方にかけて温度が下がってしまうのは、むしろアガベにとって良い環境になるのかもしれません。
また太陽光の熱やライトの熱などで日中も室内温度が急上昇することもあるので、成長率No.2のように日中も温度が上がりすぎないように気を付ける必要がありますね。
※発根管理中の株に関しては温度調整が必要
皆様もよろしければぜひご自身で試してみてください。
最後に
今回はアガベに関する論文をもとに室内の温度管理について考えてみました。
この実験は25度15度と固定なのでより最適な温度管理もあるかもしれませんし、私自身もいろいろ試してみたいと思います。
そしてまた新たな情報などあればお伝えできればと思います。