最近「LEDを使って室内で管理していたら葉が赤くなってきました!何が原因ですか?」という質問をよくいただきます。
アガベの葉が赤くなる理由はいくつか考えられますが、室内管理においての原因はほとんど決まっています。
結論から言えば「光が強すぎる」ことが原因です。
しかしなぜ強光を好むはずの多肉植物が光によって赤くなってしまうのか疑問に思いませんか?
そこで今回はその原因について解説しつつ対処法を合わせてご説明します。
理由が分かればすぐに対処出来ることですし、赤くなったからといって何かすぐに問題が起こることでもないので、すでに赤くなってしまった方はこの記事を読んで対処してみてください。
また、室内管理している場合結構起こりやすいことなのでまだそんな症状は出ていないという方も今後の参考としてお聞きいただけますと幸いです。
この記事の内容は動画でもご紹介しています。
アガべが赤くなる原因
アガベが赤くなる原因はいくつか考えられますが、こと室内管理の場合においては先ほどもお伝えしたように光が強すぎることが主な原因と考えられます。
実際にご質問をいただいた方の環境を聞かせていただくと、照射位置がとても近くかなり強い光が当たっていることが想像できます。
おそらく「多肉植物だからガッツリ光に当てた方が良いだろう!」と考えた結果、照射距離をかなり縮めて近距離から強い光を当てていた方によく出る症状かな、という印象です。
冒頭でもお伝えしたように、単純に強い光を当て続ければ良いという考えは実はちょっとリスクがありますので、まずはちょっと理屈的な部分の話をしていこうと思います。
アガベが赤くなるメカニズム
「植物は光を浴びて光合成を行っている」ということは誰もが知ることだと思います。
ただ、別の記事でも以前お話ししたことがありますが、実は植物が吸収できる光の量には限度があります。
光合成に必要な光エネルギー以上の光は余ってしまい、「活性酸素」という植物にとって有害なものが発生します。
活性酸素が発生することで、
- 葉緑体を分解する
- 細胞内の遺伝子変化を起こす
など、色々悪さを働きます。
また余ったエネルギーは光合成の装置を壊してしまうことがあり、これを「光阻害」と呼びます。
燦々と降り注ぐ太陽光を浴びて自生している多肉植物には強い光の方が良さそうですが、実はあまりに強すぎる光は逆に光合成の速度や効率を低下させてしまうのです。
そしてこの時植物は、この光阻害を防ぐために主に葉の表皮細胞で「アントシアニン」という物質を合成します。
このアントシアニンこそが葉を赤くする原因になります。
アントシアニンは強い光のフィルターとして働き、葉緑体にあまり太陽光が届かないように働きます。
アントシアニンは赤い色素と言われ、この赤い色素は葉緑体の発達を促進する働きと葉緑体を紫外線から守る働きも持つと言われています。
つまり、強光から葉緑体を守るために葉を紅葉させ、葉緑体が強光ストレスを受けないようにしているということです。
言い換えればLEDの強い光が原因で赤くなっているのは植物の自衛本能であり、ストレスがかかっている証拠と言えます。
少し話が逸れますが、屋外管理しているアガベが寒くなってくると紅葉した経験がある方もいらっしゃると思います。
もちろん他にも様々な原因があるとは思いますが、ひとつの原因として寒くなってアガベが紅葉するのもこのアントシアニンの働きと考えられます。
屋外の場合、気温が下がってくるに連れて葉緑体の光合成機能も低下します。
秋口など、太陽光が依然として強いと、植物は光が強すぎる!と判断し、先ほどお話ししたようにアントシアニンを合成して太陽光のフィルターとし、紅葉によって葉緑体が強光ストレスを受けないようにしている可能性があります。
このようにいくら強い光を好むアガベであっても限度があるので、光の当て方には注意が必要です。
室内の場合は気温の低下が原因になることはそこまで多くないと思うので、やはり疑うべきはまずLEDの光が強すぎることかなと思います。
最近の優れたLEDは太陽光に近い明るさを持つものも多く、それを近距離から当てれば当然かなりの明るさになります。
赤くなるのはアガベが「ちょっと光が強すぎるよ〜」と言っているサインだと思っていただくと良いかと思います。
ただ、赤くなったからといってすぐにどうにかなることでもないので、そこはご安心ください。
そういったサインを見つけたらこれからお話しする対処法を実践していただければと思います。
赤くなってしまった場合の対処法
先ほどもお伝えしましたが、室内管理の場合で赤くなるのはほとんどがLEDの光が強すぎることが原因だと考えられます。
加えてアガベを管理している方の多くが水を控えめにしていると思いますので、そうすると余計に光合成が出来なくなり最終的には活性酸素の除去が追いつかなくなり葉焼けを起こす原因へと繋がっていきます。
そのためまず1番の対処法としては照射距離を見直すことです。
もちろんライトごとに光の強さは異なるので一概にどれくらい離せばよいとは言えませんが、まずは倍近く離してみる、また反射板を取り外し出来るものであれば、外して光を柔らかくしてみるのも一つの手だと思います。
また水を絞りすぎるのも植物にとってはリスクなので、水をもう少し与えて様子をみてみるなども必要になってくると思います。
このように光だけが強いというのは植物にとってはストレスを感じることなので、水と風とのバランスを意識した照射が大事になってきます。
室内管理の場合、屋外のように光・水・風すべて強いという環境を整えるのはなかなか難しいことなので、そうであれば生長は緩やかにはなりますが全体的に控えめにするというのもアガベにとって快適な環境を作ってあげるためには一つの手段だと思います。
まとめ
今回は、室内管理においてアガベの葉が赤くなる原因とその対処法についてお話ししました。
葉が赤くなる原因はいくつかありますが、こと室内管理においては大抵の場合LEDが近すぎることが原因です。
心当たりがある方はライトの位置をまずは見直してみてください。
では今回はこれで以上になります。
この記事を書くにあたり参考にした資料
一般社団法人 日本植物生理学会
「アントシアニンの出る理由」
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1903
「果実の着色について」
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=1668&target=number&key=1668
光合成の森
「なぜ強すぎる光は光合成によくないのか?」
http://www.photosynthesis.jp/faq/faq11-10.html