この記事では、アガベの管理に鉢底石が必要かどうかについて、以前行なった排水性と通気性の2つに関する実験の様子をご紹介しつつ解説します。
※今回の内容はあくまで単純な実験をもとにした個人的見解になります。賛否両論あると思いますので、参考程度にお聞きください。
なお、この記事の内容は動画でもご紹介しています。
動画では実際の実験の様子も紹介していますので、参考にしてください。
鉢底石は必要か?
まず結論から言ってしまうと、今回の実験を踏まえ基本的には鉢底石はなくても良いと思うようになりました。
理由としては、以下の通り。
- アガベなどの多肉植物用の土はそもそも排水性と通気性が良い土を使うから
- 単純に鉢底石を入れると培養土の面積が狭くなり根の伸長スペースが少なくなるから
そのため排水性や通気性の良い土・栽培に適した鉢を使用すれば入れなくても問題ないと考えます。
ただあった方が良いだろうと思うケースもいくつかあります。
- 排水性・通気性が悪い鉢を室内で使う場合
- 大鉢の場合
- 鉢穴が大きい
①陶器鉢などは鉢穴がひとつしかなく排水性や通気性がスリット鉢などにくらべれば当然悪いです。
それに加えて風通しの悪い室内で管理する場合、そしてぼくのように光弱めで管理すると水やりの間隔が長くなり乾燥期間が長くなります。
その際は土通しの隙間を作るためにゴロ土を入れて空気の通りを良くするのも一つの手だと思います。
②大鉢の場合だと何年も植え替えをしない場合があるかと思います。
その際赤玉土を使っていると土が崩れみじんが詰まり排水性・通気性が悪くなる可能性があります。
それを考えると長期間植え替えをしないような株の場合は崩れない軽石を敷いていた方が安心かなと思います。
③鉢穴が大きい場合、鉢底石をいれないとそこから用土が溢れてしまうことがあります。
その際はテクニックの一つとして鉢底石を敷きカバーを作るというのはそれはそれでありだと思います。
ただ、鉢底石をいれてダメにしたということはないので、あっても別に良いかなというのが正直なところです。
環境に状況に応じて、また使う鉢や土に合わせて試していくことが大事そうですね。
今回の実験について
- 鉢底石の有無で排水性、通気性が変わるのか
- 乾きやすさはどうか
実験方法
底面の同じ場所に穴を開けた同じサイズの容器を4つ用意し、うち2つにはスリット鉢のように側面にも穴を開け、以下のように土を準備する。
- 当店でアガベ栽培に使用している土+鉢底石あり
- 当店でアガベ栽培に使用している土+鉢底石なし
- 当店でアガベ栽培に使用している土+鉢底石あり(スリットあり)
- 当店でアガベ栽培に使用している土+鉢底石なし(スリットあり)
この土に水を与えてすぐに重さを計測し、2分後、30分後、12時間後、18時間後でどれだけ水が抜けたのかを測り、重さの差が大きい方が排水性が高いと判断する。
実際の実験の様子は動画をご参照ください。
結果
実際にどれくらい含水量が減ったのか注水直後と2分後、30分後、12時間後、18時間後で測った表がこちらです。
単純実験、単純測定なのでこれが絶対に正しいとは言えませんが、表を見る限りスリット有無関係なく鉢底石なしの方が灌水直後よりも水が流れていることが分かります。
2分後、30分後、12時間後、18時間後のどこを見ても鉢底石なしの方が含水量が減っています。
考察
なぜこうなるのか調べてみると、こんな一説が見つかりました(海外サイトの情報でソースがないので真偽は不明です)。
余分な水はすぐに砂利(鉢底石)に流れ込むのではなく、砂利(鉢底石)のすぐ上にある土の中の空間が満たされるまで溜まり続けます。
そしてその空間がすべて満たされるとようやく余分な水は下の砂利(鉢底石)に流れます。
ということでした。
これが本当ならば、表のような結果になったことも頷けます。
この実験結果をみて、排水性を高めるために鉢底石の必要性を考えた場合、そもそも排水性の高い土を使っている場合は鉢底石をいれたところで大した違いはなく、必要性はそこまでないという考えに至りました。
通気性はどうか
続いて通気性について考えてみたいと思います。
通気性は水が抜けた分空気が入るので排水性とイコールになるかと思います。
つまり、含水量が減っていくスピードが速い方が通気性が良いと言って良いのではないでしょうか。
この表をみると、スリットの有無に関わらず鉢底石なしの方がはじめの含水量・灌水直後から30分後までに減った水の量ともに多くなっています。
入る水の量が多い分、抜ける水の量も多いということでしょうか…?
すっかり乾いた後は単純にゴロ土が入ることで適度な隙間が生まれ空気の通りが良くなるとも思います。
乾きやすさについて
通気性がよいということは、乾くのも速いということだろうか?と疑問に思ったので、乾きやすさについても考えてみました。
表をみると、灌水30分後以降に減った水分量は鉢底石の有無では大きく変わらず、スリットの有無で少し違っているようです。
つまり、排水性・通気性と乾きやすさはイコールではなく、乾きやすさは鉢に依存する可能性があることが分かりました。
やはりスリット鉢のように土が直接外気に触れる方が乾きやすいのではないかと考えます。
余談|排水性と通気性が必要な理由
最後に余談として、なぜ排水性と通気性が求められるのかを説明します。
植物の根は土壌中の酸素を呼吸をして栄養や水分を吸収しています。
鉢植えの場合、限られたスペースの中で根を張り巡らせるので酸欠にさせないためにはまず通気性がよいことはとても大事なことです。
さらに排水性もよければ、水やりのたびに古い空気を押し出し新鮮な空気を送ることができるので根が多くの酸素を吸えるため健康的かつ根腐れもしづらくなります。
このように通気性と排水性は両者共に重要な要素です。
また空気と水は土粒間のすき間に存在しているので、通気性の良い土イコール排水性の良い土と言えます。
ご存知のように特にアガベなどの多肉植物は多湿な環境を嫌いますので、通気性と排水性の高い土が求められるわけです。
まとめ
今回は鉢底石は必要か?の疑問に対しちょっとした実験を行い自分なりの考えを共有させていただきました。
排水性・通気性を高めるために鉢底石の必要性を考える前に、そもそもの土の排水性を高める方が効果的です。
ただ、室内で管理する場合や大鉢の場合など、入れた方が良いケースもあるので都度考えるか、入れておいて損はないということで常に入れてしまっても問題ありません。