突然ですが皆さん、西日は植物に良くないと言われていることを聞いたことがありますか?
またなぜ西日が植物に悪影響を与えるのか考えたことはありますでしょうか?
本記事では西日は植物にとって良くないということがなぜなのか、また植物とひとまとめに言ってもいろいろありますし、アガベにとってはどうなのかを考えていきたいと思います。
今回の内容はあくまで個人的な考察になりますので、参考程度にお聞きいただけますと幸いです。
なぜこんなことを考えようと思ったのかというと、当店の屋外管理スペースは南西が開けた場所で日光を遮るものがなにもなく、日中から夕方にかけてかなり強烈な日が差し込む場所です。
一方東側は建物に遮られ、朝早い段階では日は入らず、日がのぼるにつれて徐々に日がさしてくるような環境です。
そんな環境で管理しているアガベは元気に育っていますし、どれも調子良く健康的な株ばかりです。
ここで管理を始めてもう2年が経ちましたが、このように問題なく管理できているので本当に西日は良くないのか?と疑問に思ったわけです。
そこで今回は自分の検証も兼ねて西日はなぜ植物にとって良くないのかを調べていきたいと思います。
では今回の内容としては、
- 考察1 朝日と西日では光の質が違う?
- 西日が植物にとってよくないと言われる理由
- アガベにも西日は良くないのか?
になります。
まず悪いと言われる理由として単純に朝日と西日では光の質が違うのかなと思いましたので、それぞれの明るさやスペクトルについて考えてみたいと思います。
そして次にその結果を踏まえてなぜ夕日が悪いと言われているのかを考えていきたいと思います。
原因を解明した上で最後にアガベにはどうなのか?を考えていきます。
この記事の内容は動画でもご紹介しております。
Contents
朝日と西日では光の質が違うのか?
まずは朝日の西日では光の質が違うのかを考えていきます。
最初から結論になりますが、質という面においては大した違いはないようです。
理由は太陽と地球の位置関係は一定で、地球が自転することにより東から登る朝日と夕方に沈む夕日となるだけで差し込む太陽光は同じものだからです。
とはいえ、上図のように朝日と夕日では色が違って見えない?朝の方が白っぽい空で、夕日は空がより赤っぽくなるし性質が違うのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。
この理由としては光の散乱が原因だと言われています。
本来朝日も夕日も、太陽光が大気層を通過してくる長さは同じくらい長くなるため、波長の短い緑(G)や青(B)の光は散乱され、赤(R)の光が残り空が赤く見えます。
ただ、朝と夕方では大気の状態が異なります。
夕方は日中に温められた大気中に散乱の大きな要因になる水蒸気など浮遊物質などが多く漂い、朝よりも青い光がより遮断され結果朝日よりもより赤っぽい色に空が染まります。
そのため、朝日の方が夕日に比べて、赤よりも波長の短い光の成分がやや多いと考えられます。
とはいえ入ってくる太陽光は同じなので、朝日も西日の性質にそこまで大きな違いはないと言われています。
またこのことから光の強さに関しても西日よりも朝日の方が多少強いと考えられます。
西日が植物にとってよくないと言われるその他の理由
続いて光の質に大した差がないのであれば一体何が植物に影響を与えるのか別の理由を探っていきたいと思います。
調べてみたところ西日がよくないと言われる理由は主に
- 植物は午前中の涼しい時間帯の方が光合成が活発だから
- 午後の方が温度が高い(暑い)から
の2点が理由と言われているようです。
これをみると午前と午後では温度が違うのでそれが植物に影響を及ぼしていることが考えられます。
また午前中と午後で何が違うのかをもう少し考えてみると、日照時間が午後の方が長いことも違いのひとつだと思います。
そこで続いては、なぜ高い温度と日照時間が長いことが問題になるのかを考えていきたいと思います。
なぜ高い温度と日照時間が長いことが問題になるのか
一般的に植物が光合成を行う際、通常温度が高く、光量が多い方が盛んになり植物の成長に望ましいと言われています。
ただ光合成を行うには光や温度だけでなく二酸化炭素や水分も必要になります。
それを踏まえて高い温度と日照時間が長い西日が良くないと言われている理由を紐解いていきます。
光合成に必要な光以上の光は余ってしまい植物にとって害になる物質を生み出すと以前このブログでもお伝えしました。
またそこに高温・乾燥などが加わると、さほど強くない光でも害を与えることが知られています。
午後気温が高い上に長い時間光の当たる環境にさらされると植物は、葉から水分が蒸散してしまいます。
そうなると土からの水分の供給が不足気味になり葉の気孔が閉じて蒸散を抑えようとします。
そうすると、気孔から入ってくる二酸化炭素の量も減る事になり、結果光合成活動は低下してしまいます。
こう考えると涼しい午前中に植物の光合成が活発になる意味を通りますし、温度が高く日照時間の長い午後は植物にとってタフな環境になるということに繋がり、最終的に西日が悪いと言われている理由になるのではと思います。
アガベにも西日は良くないのか?
西日はよくないと言われているのが、温度が高く日照時間の長い午後は光合成効率が低下してしまう…ということでしたが、アガベで考えた場合どうでしょうか?
そもそもアガベの場合乾燥した厳しい環境下、そして強烈な太陽光の降り注ぐ場所で自生しています。
そのため一般的な植物とは光合成の仕組みが異なります。
厳しい環境下で生き抜くために昼間は水分の蒸発を防ぐために気孔を閉じていて、涼しい夜間帯に気孔を開き二酸化炭素を吸収し、また明るくなってから蓄えていた二酸化炭素(厳密に言えばリンゴ酸)を使って光合成をするというサイクルをしています。
この仕組みを持つ植物をCAM植物と言います。
このようにアガベはそもそも日照要求が強い上に乾燥にも強い植物です。
実際、今回の考察で参考にさせてもらった光合成の森には、
全ての植物に西日が悪影響を与えるわけではなく、強光・高温・乾燥に弱い植物の場合が比較的多いでしょう。
引用:光合成の森:【植物の栽培に西日は悪いか?】より
と書かれていました。
これに加えて実体験として西日がよく当たるぼくの環境下でもアガベを問題なく管理できていてます。
そのためアガベに関しては単に西日は良くないということは言えません。
ただやはり他の植物同様に温度には気をつけるべきだと考えます。
例えば、チタノタが多く自生するオアハカと東京を比べると、最高気温にはさほど差がないものの、オアハカは夜間帯は気温がグッと下がりCAM植物が二酸化炭素を吸収しやすい環境になります。
一方日本は(夏場は)夜間でも25度を超えるような熱帯夜が続きます。
このように一日を通して暑い(加えて蒸している)日本の夏の環境はアガベでさえも厳しい環境だと考えられます。
また下記の内容も参考になるかと思いますのでご紹介いたします。
植物は一定の適温で常時光が当たっていれば、最大の生長が得られるかというと、必ずしもそうはありません。
人工制御温室でトマトを育てた昔の実験によると、昼夜温度が一定の条件下では、25℃で最大生長が得られるが、昼の温度を26.5℃、夜の温度を17〜18℃にした方がさらに生長がよいということです。
引用:一般社団法人日本植物生理学会 【西日と植物の生長】より
これがアガベに当てはまるかはわかりませんが、日中と夜間帯で温度差があるというのはチタノタが自生するオアハカの環境と同じと考えられないでしょうか。
以上のことから夏場は特に西日及び温度対策は必要になると考えます。
寒冷紗で日を遮り温度を下げる、また以前実験したように真昼の暑さを和らげる効果のある日中の水やりも有効かもしれません。
日中の水やりに関してはこちらの動画をご覧ください。
実際に当店の環境下でも夏場は寒冷紗を使って西日を遮っており、また風通しをよくし温度上昇への対策があったからこそこの南西の厳しい環境下でも問題なく育てられた要因かもしれません。
まとめると…
乾燥し、太陽光を遮るものが何もない厳しい環境下で自生しているアガベにとっては西日が当たること自体はそう問題はない。
しかし気温が常に高い環境にさらされると生長が鈍化する上に、葉焼けなどのリスクも高くなる。
ということになると思います。
まとめ
今回はなぜ西日が植物の育成によくないのか、またアガベにどうなのか?についての考察になりました。
冒頭でもお伝えしましたが、今回の内容はあくまで個人の考えになりますので、参考程度にお読みいただけますと幸いです。