今回は今人気の塊根植物(コーデックス)のパキポディウムの特徴や育て方を解説します。
尚、品種によって栽培の方法が異なってくるのであくまで一般的な育て方として参考にしてください。
Contents
- 1 パキポディウムの特徴
- 2 パキポディウムの品種
- 2.1 パキポディウム・グラキリス(Pachypodium gracilius)
- 2.2 パキポディウム・デンシフローラム(Pachypodium densiflorum)
- 2.3 パキポディウム・マカイエンセ(Pachypodium makayense)
- 2.4 パキポディウム・ゲアイー(Pachypodium geayi)
- 2.5 パキポディウム・ラメリー(Pachypodium lamerei)
- 2.6 パキポディウム・ホロンベンセ(Pachypodium horombense)
- 2.7 パキポディウム・サンデルシー(Pachypodium saundersii)
- 2.8 パキポディウム・ロスラーツム(Pachypodium rosulatum)
- 2.9 パキポディウム・ラモスム(Pachypodium ramosum)
- 3 パキポディウムの育て方
- 4 まとめ
パキポディウムの特徴
科名 | キョウチクトウ科 |
---|---|
属名 | パキポディウム属 |
原産地 | マダガスカル・アフリカ南部 |
栽培難易度 | 容易〜難しい(品種などによる) |
生長速度 | 普通〜早い |
パキポディウムはマダガスカル原産の植物で、肥大した茎や根を持つ塊根植物の仲間です。
塊根植物の中でも特に人気が高く、ギリシャ語で「太い」を意味する「pachys」と「足」を意味する「podos」を組み合わせてパキポディウムの姿を表す言葉が名前の由来となっています。
ただそのシルエットは様々で、丸々と膨らんだ形状のものから柱状のもの、扁平型のものまであります。
現在20種ほどが確認されており、その多くがマダガスカル原産で、一部サンデルシーや光堂などの種がアフリカ南部にも自生しています。
アフリカ南部の冬は0度近くまで下がることもあり、マダガスカルのパキポディウムよりも耐陰性が高いと言われています。
いずれにせよ、自生地では有機物の含まない荒れた丘陵の岩場や乾燥した平原に自生しており、強い陽射しを浴びて生育しています。
栽培管理上ではほとんどのパキポディウムが夏型の植物で、冬には落葉し休眠期に入ります。
その独特な形状と端正な花を咲かせることから多くの植物ファンを魅了する植物です。
実生と現地球の違い
国内でパキポディウムを購入する場合は、国内で栽培された実生株か輸入されてきた株を購入するかのどちらかになります。
パキポディウムは高額というイメージをお持ちの方が多いとは思いますが、一般的に数万から数十万もするようなパキポディウムはマダガスカルで採取した株を輸入した、いわゆる「現地球」と呼ばれるものです。
現地の環境で育った株をそのまま持ってくるので、特大サイズのものから独特なシルエットをしているものなど魅力的な株が多く見つかります。
また、検疫を通すために根がない状態で送られてくるので発根管理も必要になります。
現地球は魅力的ではありますが、このように手間暇がかかる分、当然価格も上がってしまいます。
一方、国内で種から育てた実生株は流通量も多く比較的リーズナブルです。
実生ではあれば、サイズにもよりますが1,000円から1万円程度で購入できるものがほとんどです。
ただ残念ながら実生を現地球のような荒々しい形にするのは環境が違うので難しいです。
が、実生株は実生株の魅力があります。
例えば、現地球の多くは自生地で風や土がバンバン当たるのでボディがツルツルしていることが多いですが、ハウスで大事に育てられてる実生株はトゲトゲしい姿をしていたりします。
また、パキポディウムは割と生育旺盛なのでしっかりと管理して育てれば現地球に負けず劣らずの立派な株に育てることも可能です。
実生の小さい株から育てて、時間をかけて大きく生長させるのもひとつの楽しみだと個人的には思います。
一概には言えませんが、育てやすさにしても現地球とは違い、国内で育てられた株なので日本の環境に順応しており、育てやすいというメリットもあります。
もし始めてパキポディウムを育てるのであれば、リーズナブルで育てやすい実生株から始めてみて、その魅力にハマったら現地球にチャレンジするのが良いかもしれません。
パキポディウムの品種
ここではパキポディウムの代表的な種をいくつかご紹介します。
パキポディウム・グラキリス(Pachypodium gracilius)
パキポディウムの最人気種であり、パキポディウムと言えばグラキリスをイメージされる方が多いと思います。
マダガスカル南西部に位置するイサロ地方が原産の植物です。
パキポディウム・ロスラーツムの変種・亜種とされ自生地で大きく生長し、中型種として扱われています。
幹が根元で丸々と肥大し球形になり、その上に枝を伸ばしツボ型に生長していく端正な姿が人気です。
パキポディウムの中でも育てやすく、日本では「象牙宮」の愛称で古くから親しまれています。
パキポディウム・デンシフローラム(Pachypodium densiflorum)
デンシフローラムは花も美しく、丈夫で育てやすいので、初めての方にもおすすめのパキポディウムです。
大きくなると幹が肥大化し、独特な形状を楽しめるようになります。
茎は根元付近から枝を出して広がり、壺型に膨らみます。
自生地ではマダガスカルの中央部に広く分布し、最大では直径1mにまで生長するようです。
また、春には鮮やかな黄色い花を咲かせるのも魅力の一つです。
パキポディウム・マカイエンセ(Pachypodium makayense)
マカイエンセは2004年に新種として発見されたまだ新しい品種です。
「魔界玉」という凶々しい和名が付いていますが、単純に学名のマカイエンセの当て字ということです。
小さい株の頃は柱状に縦に伸びていきますが、成熟していくと横に伸び、太い枝を無数に展開し、見事な株に生長します。
また開花期には黄色い花を咲かせ、その中心が白くなるという特徴があります。
パキポディウム・ゲアイー(Pachypodium geayi)
鋭い棘と、葉の表面にうっすら微毛があるのがゲアイーの特徴です。
マダガスカルの南西部が原産の植物で、自生地では真っ直ぐと伸び、7m近くまで生長するパキポディウムの中でも大型種の部類です。
また、小さな株の頃は刺々しい姿をしていますが、大きく生長すると棘はなくなり全く違う雰囲気の株へと変化していきます。
開花期には青みを帯びた美しい花を咲かせ、大きく生長しないと開花しないそうです。
栽培に関してはとても丈夫で育てやすい品種です。
パキポディウム・ラメリー(Pachypodium lamerei)
ゲアイーと瓜二つなのがラメリーです。
ヤシの木に似ていることから「マダガスカルのヤシの木」と呼ばれることもあります。
ゲアイーとラメリーの見分け方としては、ゲアイーの葉には微毛があるのに対してラメリーは微毛がなく鮮やかなグリーンの葉をしていることの2点で、しっかりと見比べないとほとんど違いは分かりません。
ラメリーも柱状に伸びる大型種で自生地では5~6mにまで生長し綺麗な白い花を咲かせます。
ゲアイーと同様に丈夫で育てやすく、パキポディウムの入門種としておすすめです。
どちらも普及種なので多肉植物専門店などに行くと見つかると思います。
パキポディウム・ホロンベンセ(Pachypodium horombense)
ホロンベンセはマダガスカル南部のホロンべ高原周辺が原産地で、ユニークなフォルムから人気が高いパキポディウムです。
生長すると基部が肥大化し、春になると釣り鐘のような形の、鮮やかな黄色の花を咲かせます。
自生地では直径が5,60cm程度に、高さは1m程度にまで生長する中型種です。
とても人気のある品種ですが、現在現地球は希少となっており手に入りづらくなっているようです。
実生であれば多く見つかるので、パキポディウムの中でも人気の高いホロンベンセを育ててみたい方はぜひ探してみてください。
ただ、根が細い植物なので少し神経質な植物なので他のパキポディウムと比べると少し手間のかかる植物でもあります。
パキポディウム・サンデルシー(Pachypodium saundersii)
サウンデルシーは基部がどっしりと肥大化するタイプのパキポディウムです。
「白馬城(はくばじょう)」という和名を持ち、白い幹が特徴的なパキポディウムです。
アフリカ南部のモザンビークやジンバブエなどに自生しており、マダガスカルよりも気温が下がる地域で自生している植物なので耐寒性にも強く、育てやすくおすすめの品種です。
パキポディウム・ロスラーツム(Pachypodium rosulatum)
ロスラーツムは人気のグラキリスやカクチペスなどのロスラーツム系と呼ばれる仲間の基本種です。
大きくなるとグラキリスのようにボッテリとしたシルエットにはならず、「ボトル型」に生長していきます。
枝を分岐させて伸ばし、その枝も同様にボトル型になるので存在感のある株に成長していきます。
育てやすく実生も多く出回っているので、おすすめの品種の一つです。
パキポディウム・ラモスム(Pachypodium ramosum)
ラモスムは先ほどご紹介したラメリーの仲間です。
ラメリーが柱状に生長していくのに対し、ボトル型の幹が1m前後で分かれて複数の枝を伸ばしていきます。
自生地では、ラメリーよりもややコンパクトに収まり2~3mまで生長していきます。
他にも恵比寿笑いやサキュレンタム、ウィンゾリーなど人気種がありますので、また別に機会にご紹介できればと思います。
パキポディウムの育て方
冒頭でもお伝えしたように品種はもちろんのこと、生長期の違い、実生と現地球などの違いなどで育て方は異なってくるので、あくまで一般的な育て方としてお読みください。
置き場所
1年を通して日当たり良く、風通しの良い場所で管理します。
屋内だと光量ともに風が不足するので基本的には屋外で育てることをおすすめします。
過湿には弱いので雨の日は軒下などに移動させ、真夏は遮光ネットなどで光量を調整します。
少なめで乾きやすい用土を使用している場合は、屋外で雨ざらしにしていても良く育ちます。(生育期に限る)
品種にもよりますが、寒さに弱いパキポディウムは最低15度程度、強いパキポディウムでも5〜10度位になってくると落葉し始めます。
落葉を始めたら室内に取り込みます
水やり
生育期は用土が完全に乾いてから少し経ってからたっぷりと与えます。
パキポディウムが枯れる多くの場合が、水の与え過ぎが原因です。
葉が落ち始めたら控えめにして、葉が落ちたら翌シーズンまだ葉が出てくるまで断水します。
ただし、実生株やホロンベンセなど根が細いタイプの品種は状態を見て月に1度程度与えることもあります。
肥料
植え替えの際に「マグアンプK」などの緩効性肥料を元肥として与えます。
また生長期には月に1〜2回程度薄めた液体肥料を与えます。
用土
水はけの良い土がおすすめです。市販の多肉植物用の土かサボテン用の土でも問題ありません。
ご自身でブレンドされる場合は、
- 硬質赤玉土
- 硬質鹿沼土
- ゴールデン培養土(ペレットのみ)
- くん炭
- ゼオライト
に加えて、
- マグァンプK(肥料)
- オルトラン(防虫剤)
を植え込みの際に適量混ぜておきます。
配合比率としては、
- 赤玉土:1
- 鹿沼土:1
をベースにゴールデン培養土のペレットとくん炭を少量混ぜています。
尚、大鉢(5号以上)でない限り、赤玉土・鹿沼土共に小粒を使用しています。
多肉植物用の用土に関しては下記の記事に詳しくまとめています。
冬越し
品種によって異なりますが、葉っぱが落ち始めてきたら室内に取り込んだ方が無難です。
病害虫
カイガラムシが付く場合があります。
カイガラムシは葉と幹の付け根や葉の裏側に付くので、見つけ次第ブラシなどで落とすか、薬剤を使って駆除します。
植え替え
2〜3年程度を目安に植え替えます。
植え替え適期は3月〜5月頃になります。
増やし方
実生が一般的です。
まとめ
今回は今人気の植物「パキポディウム」をご紹介しました。
パキポディウムを含む多肉植物はとても奥が深いので、一度ハマると病みつきになる魅力があります。
ぜひまずはパキポディウムの実生から始めてみて、その魅力に触れてみてください。
- 主にマダガスカルが原産の植物
- 20種ほど確認されている
- 実生株と現地球がある
- 屋外でしっかりと陽に当て風通しの良い場所で管理する
- 水やりは鉢土が乾いてからさらに数日あけてから与える
- 冬場はほぼ断水で育てる
- 寒さには弱いので落葉が始まったら室内に取り込む
- 植え替えの際に元肥、成長期に薄めた液肥を月に1、2回与える
- 植え替えの適期は3月〜5月頃