多肉植物

【アガベの徒長とは】徒長の原因から対策を考える

本記事では最も質問の多い、「アガベの徒長」についてお話します。

原因が分かれば対策は自ずと見えてくると思いますので、今回はアガベが徒長してしまう原因を細かくみていきたいと思います。

この記事の内容は動画でもご紹介しています。

徒長とは

ではまずは徒長が何なのかについてお話しします。

徒長を簡単に言えば、

植物の茎や枝が必要以上に伸びて貧弱になり間延びしてしまった状態

のことです。

徒長の状態

聞いてもよく分からないと思うので、実際に徒長してしまったアガベをお見せしながらお話しします。

写真のアガベはフィリグリーデビルというチタノタです。

生長点がいくつもあり、コンパクトながらも幅広の葉を多く展開し、イカつく肉厚の葉を密集させまさにチタノタらしい攻撃的な見た目をした種になります。

ただこの個体は後ほど徒長の理由の一つとして挙げる「光(=日照不足)」が不足し、本来であればの幅広で肉厚な葉が展開するはずが細長く、ヒョロッとした葉が生えてしまっています。

写真の下の部分の葉と見比べていただければお分かりいただけると思いますが、下の葉が肉厚で幅広なのに対し、上の葉は細長くなってしまっています。

下葉は幅広で肉厚な本来の葉の状態
上の葉は細長く徒長してしまっている

この個体はLED管理をずっと続けている個体ですが、ライトの照射範囲からずれていることに気づかず放置した結果このような形になってしまいました。

徒長の見分け方

もちろん元々細長いタイプのアガベもいるので、単に細長くなったから徒長した…ということにはなりません。

見分けるためには本来の姿を知っておくことが大事です。

その形に比べて現状の形がどうかで判断するようにしていただくと良いと思います。

徒長はなぜ悪い?

徒長してしまうとどんな問題があるのかについてもお話しします。

それはまず第一に見た目が悪くなり、鑑賞価値が大きく下がるということです。

アガベが好きな方はそのカッコ良い姿に惚れている方が多いと思います。

徒長することで本来の美しい姿から離れ、一気に鑑賞価値が下がってしまいます。

とは言え、先ほどのフィリグリーデビルのように徒長したからといってそこまで見た目が悪いとは言えない株もあります。

ただ実は徒長は、見た目が悪くなるだけでなく正常に育ったアガベに比べると病弱・虚弱になり、害虫に対する抵抗性も弱く、暑さ寒さなど、環境の変化も受けやすくなるという内面も悪くなってしまいます。

徒長したからすぐに枯れるということはまずありませんが、後々何かしらの影響を受けやすくなり、結果枯れてしまうということに繋がる可能性があります。

そして一度徒長してしまうと元の状態に戻すことは難しいので、何より徒長させないことが大事です。

徒長の4つの原因

徒長がどんな状態なのか理解した上で、次になぜ徒長してしまうかについてお話ししていきます。

多くの場合原因は、

  • 日照不足
  • 水分過多
  • 風通しが悪い
  • 肥料過多

による場合がほとんどです。

それぞれ何が悪いのかご説明します。

日照不足

アガベを含む多肉植物は遮るものがないような強烈な日を浴びて自生しているので、日照不足は徒長の1番の原因になります。

とはいえ強い光が必要ってことは分かるけれど、実際どれくらいの強さなのでしょうか。

そこでまずは屋外の太陽光がどれくらいの明るさなのかを考えてみたいと思います。

ここでは太陽の明るさを分かりやすくするために明るさの単位である「ルクス(照度)」を用いて考えてみたいと思います。

本来であれば植物が感じる明るさはPPFDを用いた方が良いのですが、馴染みのない方が多いと思うの今回はルクスを使わせてもらいます。

あくまで目安になりますが、

晴天時の屋外:50,000〜100,000ルクス程度

曇天時:20,000〜30,000ルクス程度

の明るさがあります。

※時間帯にもよる

一方室内は明るいと感じる部屋でも1,000ルクス以下の場合がほとんどで、明るい窓辺でも、1万〜3万ルクス程度しかありません。

先ほどもお伝えしたように単にルクスが高ければ植物の生長に良いというわけではありません。

ただもし室内に置いていて徒長してしまったというのであれば強光を浴びて自生している多肉植物にとっては圧倒的に光が足りないことが良く分かると思います。

またアガベが自生しているネバタやオアハカなどは雨季と乾季に別れており、乾季はほぼ雨が降らないような環境で常に晴天が続き、雨や曇りの多い日本よりも日光量は多いといえます。

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そのため日本でアガベを育てる場合は最大限光を確保してあげないと、アガベを含む多肉植物などは日照不足になります。

最低限、暖かい時期は出来るだけ外に出し、光に当てる。

また室内であれば植物育成LEDで光を補う。

くらいのことをしないとアガベに必要な光量は確保できません。

冬場もしっかりと光に当てる

また冬場は寒さ対策として室内に取り込む場合が多いと思いますが、この冬場の管理もアガベを美しく育てるために重要な時期になります。

室内に取り込んだ場合も出来るだけ日の当たる場所に置き、また育成ライトなどを使ってしっかりと光に当てておくと翌シーズン展開する葉が短く肉厚な葉が出てきて、鋸歯が引き立ちカッコいい株姿を楽しめます。

水与えすぎは厳禁

続いて徒長の原因の2つ目である「水の与えすぎ」についてお話しします。

水が多いと内部が水膨れのような状態になり結果的に間延びしてしまいます。

先ほどもお伝えしたように、アガベの自生地では乾季はほぼ雨が降りません。

そのため、与える時にはたっぷりと与えるというメリハリを利かせた水やりが大事です。

どのくらいのペースでというのはそれぞれの環境によって異なるので一概には言えませんが、基本的には土が乾いてから与えるというのを覚えておくとよいと思います。

また、下葉の様子を見てシワが入ってくると水が不足しているサインなので、日々状態を観察し、ご自宅の環境にあった与え方が大事です。

1番やってはいけないのが、日照条件が悪い中で水を多く与えることです。

これが続くとすぐに徒長してしまいます。

特にチタノタは水やりの頻度が高いほど、葉に水分がたまりいくら日に当てても徒長しやすくなります。

与えすぎも悪いが絞りすぎもリスクがある

ただ逆に光だけ強くして水を切り過ぎるというのは葉焼けを起こすリスクが高くなります。

植物が吸収できる光の量には限度があります。

光合成に必要な光エネルギー以上の光は余ってしまい、「活性酸素」というものが発生します。

この活性酸素は植物にとって有害なものです。

ここで詳しくは話しませんが、活性酸素が発生することで、
細胞は死んでしまい葉が部分的に変色したり、枯れる…という葉焼けの症状が出てきます。

通常であれば植物はこの活性酸素を除去する酵素を持っています。

ただ、作り込むために水を絞ったりなど水不足というストレスを与えると光合成ができなくなり、活性酸素の除去が追いつかなくなります。

そのため、水不足の状態で強い光を当てるというのは葉焼けを起こすリスクが高くなるので、植物の状態をよく観察し、光と水のバランスを意識することが大事です。

土を見直してみよう

どの植物にも言えることですが、特に乾燥地帯に自生しているアガベは常に土が湿っている状態を嫌います。

乾きやすく、水はけの良い土を使うことも大事です。

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水耕栽培中も徒長しやすい

アガベの発根管理を水耕栽培で行うことも多いと思います。

水耕栽培が長引くと根が水分ばかり吸収して徒長することもあるので、発根後は出来る限り早く土に植えることをおすすめします。

風ってなんで必要なの?

日光と水に加えて大事なのが風通しです。

風通しが悪いと、徒長や蒸れて葉が痛んだり、夏場など高温により葉焼けの原因に繋がります。

植物を栽培するのに大事なのは水と光、加えて風のバランスです。

屋外であれば風通しの良い場所に置く、室内であればサーキュレーターなどで風を循環させることが大事です。

徒長を防ぐエチレンって何?

植物には植物ホルモンと呼ばれる物質があります。

特に風が強い環境で自生しているアガベ(多肉植物含む)は強風に耐えるために植物ホルモンを分泌し、この際エチレンが発生します。

このエチレンが伸びを抑えて茎を太くします。

そのため全く風がない状態だと、エチレンが発生せず、徒長に繋がっていきます。

風のない室内でサーキュレーターを使って風を当てるというのはこういった意味もあるからです。

肥料過多

肥料過多も徒長の原因のひとつです。

細かくいえば肥料分の中に含まれている葉や茎の伸長に必要な成分であるチッソが多いと徒長しやすくなります。

とはいえある程度肥料分がないとアガベは美しく生長しないので全く入れないというのもNGです。

どれくらい与えれば良いのか

アガベを育てている方が1番馴染みがあるのが緩効性肥料のマグァンプKだと思います。

マグァンプには一般的に植物の成長に必要な成分であるチッソ、リンサン、カリ、マグネシウムがバランス良く含まれているのでアガベなど多肉植物にも使えます。

また植え替えや植え付け時に元肥として混ぜることで長くじっくり効くので急激な栄養過多にもならず使いやすい肥料です。

マグァンプKを使う場合は、裏面にサボテンの使用量というのが載っていますので、そちらを参考にして与えると良いです。

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雨ざらしのリスク

いくらゆっくりと長く効く緩効性肥料だとしても、水やりの回数が多いと溶け出すのも早くなります。

先ほどの水やりの説明で水やりは辛めにとお伝えしたので、通常の水やりで肥料分が多くなるということはまずはないと思います。

ただ、屋外で雨ざらしにしている場合はちょっと危険です。

鉢土が湿りがちな状態が続くと土に溶け出した成分を根が吸い上げてこれまた葉が間延びする可能性もあるので、土の乾き具合はよくチェックすることをおすすめします。

まとめ

今回は、アガベが徒長する原因についてお話ししました。

原因がわかれば対策も講じやすいと思いますので、今回の内容とご自宅の環境を照らし合わせて、徒長するリスクがないかちょっと考えてみてください。

では今回は以上になります。